『すみれ』 母親想いで早く生まれてきてくれたわが子
投稿者:ハナ
私たち夫婦の初めての子が女の子であるという事がわかったのは妊娠八ヶ月の時でした。
それまで、子供の名前は男女ともに何となく考えていました。
しかし、生まれてくる子の性別がわかると、それが一気に本格化(?)しました。
名付けの事で夫と話し合う事も多くなりました。
名付けに関して夫と意見が共通していたのは『自然に関するもの』という事です。
たとえば、草木の名前や、風や水などの自然現象など、とにかく自然に関する漢字や文字を名前にしたいと思っていました。
その理由の一つが、私自身の名前が花の名前である事でした。
私は自分の名前をとても気に入っていました。
ところが…。
出産予定日が七月上旬だったのです。
できれば、生まれた季節に咲く花の名前をつけたいと思っていました。
春ならば、桜、梅、桃。
そして秋冬ならば、紅葉や楓、椿など。
でも、夏の花のイメージが、どうしても名前と結びつかずに、かなり悩みました。
そんな中、マリンスポーツが好きな夫は、夏を感じさせる名前をいくつか候補にし始めました。
それも確かに自然を感じさせる素敵な名前ばかりでした。
でも…。
私はどうしても花の名前にしたいと思っていました。
また、その季節の花でなくては意味がない、と思っていました。
そして、その思いに関しては、とにかく頑固(!)でした。
そんなある日、私は突然、破水しました。
あわてて病院へ行くと、すぐに分娩体制に入るとの事でした。
そして、その日中に私は元気な女の子を出産しました。
予定日より、三週間も早い六月の中旬でした。
それから病室で休んでいると、駆けつけてくれた夫が私に聞きました。
名前どうする?と。
私は『すみれ、でいい?』と言いました。
夫は、そうだと思ったと言って笑いました。
実は出産の直前、夫と名付けの事で少し揉めてしまったのです。
どうしても花の名前がいいけれど季節に合う名前がない、と悩み続ける私が夫は理解できなかったようなのです。
そして、夏生まれだからこの名前にする!と、夫に断言されてしまっていたのです。
でも、生まれた子は六月生まれでした。
結局、季節的には春と夏の中間、だからどちらの季節にもふさわしい、という私の強気な理論(?)が押し通される結果になったのです。
今では毎年春になると、すみれの花が庭いっぱいに咲き誇ります。
種類によっては、六月になってもきれいな花を咲かせます。
予定日よりもずっと早い出産であわてましたが、思いどおりの素敵な花の名前を付けられて、幸せです。