『陽翔(はると)』 受け継がれる思い。大切な物
投稿者:DK
我が家には間も無く1歳の誕生日を迎える子供が居ます。
男の子で名前は陽翔(はると)といいます。
この子の妊娠がわかった時期とほぼ同時に妻方の祖父の身体に癌が発見されました。
祖父は以前にも膀胱癌を発症していたのですが、今回は大腸癌の末期と申告されました。
正直、子供が出来た喜びと祖父の病気発覚が重なったので、私達夫婦の心境的にはかなり複雑でした。
お腹の中ですくすく育つ我が子と病に犯され弱っていく祖父。
喜びと悲しさが交錯する毎日でした。
その後、妻と2人で初めて祖父の元へお見舞いに行き祖父の変わり果てた姿に驚き、なんと表現していいのかわからない気持ちでいっぱいになっていると、祖父からこんな事を言われました。
「子供が産まれてくるまで生きていたいなぁ」
妻と私は思わず涙が出そうになったのを今でも覚えています…。
後日、妻方の両親から「じじねぇ、2人が来たらすごい嬉しそうに笑うんだよ。だからまた行ってあげて」と伝えられ、私達は頻繁にお見舞いに行くようになり、祖父に初ひ孫を抱かせてあげる為に自分達に出来ることを精一杯やりました。
ですが数ヶ月後祖父は、病院で息を引き取りました。
妻の両親から「じじ危ない」と連絡が来た時、私は仕事の都合で駆けつけるのが遅くなってしまいました。
話によると、先に着いていた自身の孫である私の妻の手を握ったまま息を引き取ったそうでした。
その日の夜の仮通夜が終ってから妻と私はなかなか決める事の出来なかった子供の名前を決めました。
『祖父のように温かい心を持ち大きく羽ばたいてほしい』と言う思いで、当て字な部分もありましたが『陽翔』と名付ける事にしました。
そして1月31日に祖父が息を引き取った病院で安産出産し陽翔が産まれて来てくれました。
命の大切さや重さを改めて実感しました。
最近、仏間に飾ってある祖父の遺影を見て、陽翔が笑顔を浮かべるので不思議な気持ちです。
陽翔を祖父に抱かせてあげることはできませんでしたが、私達夫婦はこの名前を祖父から頂いたものだと今でも思っています。
そしてきっと陽翔の中で祖父は生き続けているのだと思います。