『蓬麻(ほま)』 あなたが生きて行く上で必要なもの
投稿者:17
娘を妊娠した時に、主人に命名してもらおうと思っていました。
それは、海外出張が多い主人が娘と過ごす時間はあまりにも短いと分かっていたからです。
そして娘が、主人がいないことに寂しさを感じた時に、主人がつけたその名前をたくさん呼んであげて、たくさん主人の想いを主人の代わりに伝えていきたいと思ったからです。
男の子だと思っていたので、戦や処世術などについて書いてある漢文から男の子の名前をとろうと最初は思っていました。
その理由としては、古くからある賢者の言葉にはとても力があると思っていたからです。
自分達の息子には、そういう力がある言葉を名前としてつけることで、自分の道を切り開いて欲しいと思っていました。

しかし、妊娠後期になった時に女の子だと分かり、主人の読む本は一変しました。
なぜならば、漢文は男の子には向いている内容が多いですが、女の子のように柔らかさや優しさなどが書かれてあるようなものはとても少ないからです。
また、漢文で使われる漢字の意味と、その漢字が一般的にイメージされる内容は異なるため(例えば「微」という漢字だったり)、とても苦戦しました。
一度は、漢文からとるのはやめて、名前の音や入れたい漢字から名前を作ろうと思ったようですが、なかなかうまいこと名前をつけることはできませんでした。
主人にとって、音や入れたい漢字よりも、名前の背景にある意味をとても重視することが大事だったようです。
ある日、草を見て主人が言いました。
「大地に根をはるというのは、とても大事なことだよね」と。
そして、思いついたように紙にとある漢字を書き出しました。
それが「蓬麻」です。
その名前は、「蓬麻中に生ずれば扶けずして直し」という荀子の漢文からとったようで、ことわざにすると「麻中の蓬」と言われています。
この漢文には、地を這うように横に伸びて生える蓬(よもぎ)も、縦に真っ直ぐ伸びる麻の中に植えれば、麻と同じように縦に伸びる、ということから「良い人の中で育つと、自然とその中で良い影響を受けて、良い人間になる」という意味があります。
このことから、娘に「良い友達を持てますように、良い環境に恵まれますように」という想いを込めています。
せっかく名前の最有力候補が見つかったのだから姓名判断で画数を見てもらったのですが、その内容はあまり良いものではありませんでした。
私は悩みました。
「わざわざ悪い内容を持っている名前をつけなくてもいい」と。
ただ、主人がたくさん悩んでつけてくれた名前なので、こういうのは気の持ちようだと思って、姓名判断の結果を退けて、娘に名前をつけることを決めました。
娘が無事に生まれて顔を見たときに「ああ、やっぱりこの名前だったんだ」と思うような顔つきで、迷いなく命名することができて良かったです。